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TBS NEWS

2018年8月7日

燃料デブリ取り出しへ-学生たちの挑戦IRID=国際廃炉研究開発機構シンポジウム2018

[ TBS科学担当解説委員 齋藤泉 ]

  • 今年のIRIDシンポジウムは東京工業大学で開催
  • 2021年「燃料デブリ」取り出し開始に向けた課題
  • 廃炉に挑む!初めて学生たちが研究成果を発表 
  • 「廃炉と復興」には多分野にわたる人材育成が不可欠

■今年のIRIDシンポジウムは東京工業大学で開催

 3つの原子炉で炉心溶融=メルトダウンを起こすという世界でも例のない原発事故となった福島第一原発。事故から7年半が経とうとしている中、廃炉の技術面での司令塔となっているIRID=国際廃炉研究開発機構の恒例のシンポジウムが今月2日、東京工業大学の大岡山キャンパスで開催された。去年7月、3号機の底部の水中に投入されたロボットが「燃料デブリ」と思われる塊の撮影に成功した。これは廃炉に向けた大きな一歩ではあるが、同時にその取り出しが容易ではないことを関係者は改めて認識した。(1枚目は3号機ドーム屋根、2018年4月6日 提供:東京電力)

(3号機で確認された「燃料デブリ」とみられる塊 提供:東京電力)


■2021年「燃料デブリ」取り出し開始に向けた課題

 東京電力や関係機関は、燃料デブリの取り出し方法について、複数の工法を組み合わせる基本方針を決めた。具体的には格納容器の底部には横からアクセスし、炉心のある圧力容器内部には上からアクセスすることを検討している。また、当初は格納容器全体を水で満たして取り出しを行う「冠水工法」が有力な方法と考えられていた。これは水によって内部の放射線をある程度抑えることができるからだ。しかし、2号機などでは格納容器の破損が激しく、水を注入しても漏れが止まらず、止水は困難だ。このため現時点では「冠水工法」は難しいと判断、水を満たさずに行う「気中工法」を軸に進めることが決まった。燃料デブリの取り出し作業は、課題を残したまま2年後の2021年に着手されることになっている。

■廃炉に挑む!学生たちが研究成果を発表

 今年のIRIDシンポジウムでは、資源エネルギー庁の国家プロジェクトと文部科学省の人材育成プログラムを通じて呼びかけた大学、大学院から8人の学生・大学院生がエントリーし、廃炉に向けた研究成果を発表した。彼らの専攻分野は原子力工学や機械工学だけでなく、情報科学や都市・建築学など多岐にわたっている。研究内容もロボットを使った遠隔技術、デブリの冷却方法、建屋の健全性、そしてデブリ取り出し方法と広範囲なものとなった。初めての学生たちによる研究発表では、関係者による審査の結果、最優秀賞にはデブリ取り出し方法に関する研究を発表した東京工業大学大学院博士課程3年の墨田岳大さん、優秀賞にはロボットハンドのグリッパ機構を研究した東北大学大学院博士課程1年の藤田政宏さんが選ばれた。(1枚目が藤田政宏さんの発表、2枚目が墨田岳大さんとIRIDの石橋理事長)

IRID理事長の石橋英雄氏は「廃炉を担う若い人たちに強いインセンティブを持ってもらいたい。研究発表によって問題意識も深まる。なにより発表の場があることは、彼らの励みになる」と述べた。この研究発表は来年以降も続ける方針だという。

■「廃炉と復興」には多分野にわる人材育成が不可欠

 IRID副理事長で芝浦工業大学の新井民夫教授は“君に何を期待するか”と題した学生たちへのメッセージの中で「自分の分野を他の分野から眺める経験を積むこと。コミュニケーション能力を常に高める努力を常に継続することが必要だ」と呼びかけた。福島第一原発の廃炉には様々な技術分野での協力と連携が不可欠になる。30年から40年かかるとされる廃炉、そのカギを握るのは世代を越えた人材育成に他ならない。東京電力や関係機関は、廃炉について順調に進んでいる部分だけでなく、頓挫した技術や失敗例などマイナスの部分についても情報開示を積極的に行うべきだろう。

齋藤泉

齋藤泉(TBS科学担当解説委員)

経産省、文科省、外務省など10の省庁を担当。先端技術、ロボット、次世代エネルギー、情報通信など取材。東日本大震災後は福島第一原発の廃炉の現場取材を継続。趣味はジャズと映画鑑賞。合気道二段。