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TBS NEWS

2017年6月29日

国立天文台が進める銀河の“国勢調査”

[ TBS科学担当解説委員 齋藤泉 ]

  • 「すばる望遠鏡」の超広視野カメラ=Hyper Suprime-Cam
  • 国立天文台が進める銀河の“国勢調査”と暗黒物質の解明
  • 進化する日本の天文観測技術、その可能性は・・・

■「すばる望遠鏡」の超広視野カメラ=Hyper Suprime-Cam

 この映像は日本の国立天文台がハワイ島のマウナケア山の標高4200メートルの山頂に持つ「すばる望遠鏡」が捉えたものだ。(提供:国立天文台/HSC Project)

 「すばる望遠鏡」は世界最高精度の口径8.2メートルの反射鏡を備えた最新鋭の天体観測機器だ。2012年8月に現在の超広視野カメラ=Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム)を稼働させた。この極めて視野の広いカメラによって、満月で言うと9個分の広さの範囲を一度に撮影することができる。レンズは光学機器メーカーのキヤノン、カメラのCCDは「スーパーカミオカンデ」で技術を提供した浜松ホトニクスが担当するなど、まさに日本の物作りの力を結集した望遠鏡だ。

 国立天文台が「すばる望遠鏡」を使って今、進めているプロジェクトが銀河の“国勢調査”だ。これらの映像の中に映っている無数の光りは星ではなく銀河だ。私たちの地球がある太陽系が属している銀河は「天の川銀河」と呼ばれている。その中には実に2000億個の恒星があると言われている。恒星とは太陽のように自ら光を放つ星だ。従って、地球のような惑星やその周りをまわる月のような衛星、そして小惑星、すい星などを入れると、文字通り「天文学的な数」の星が存在する。ここに掲載した2つの映像には、数百万の銀河が映っているという。

■国立天文台が進める銀河の“国勢調査”と暗黒物質の解明

 国立天文台が銀河の“国勢調査”を進めるのは何故か?プロジェクト・リーダーの宮崎聡・准教授は次のように話す。

 「撮影した映像を解析して銀河のカタログを作るのが目的。全ての観測を終えると1億個くらいの銀河が分かり、色々な研究ができる。銀河が生まれてから、どういう成長をしたのか、など。今一番注目しているのは銀河の正確な形だ。遠方の銀河を観測することで光りを曲げる暗黒物質が分かる。暗黒物質がどこにどれだけあるのかを調べ、暗黒物質の地図を作ることは、この望遠鏡にしかできないことだ」

 「暗黒物質」とは、宇宙の大半を占めているけれども、未だに観測されていない仮説上の物質で「ダークマター」とも呼ばれている。銀河の“国勢調査”をすることは、実は暗黒物質の分布を解明することにつながるという。最終的には5年間で宇宙全体の30分の1をカバーした宇宙地図が完成するという。

■進化する日本の天文観測技術、その可能性は・・・

 「すばる望遠鏡」による観測は、様々な可能性が期待されている。宮崎准教授はこう述べる。「望遠鏡ではあるが、カメラなので色々なことができる。太陽系内にあるかもしれないが、未だに見つかっていない惑星を探すプロジェクトも始まっている。広い視野なので、どこにあるのかを探すのが得意。今のホットな話題としては、重力波を出す天体を見つけること。暗い天体をシャープに撮影できる、こうしたカメラは他にないので色々な可能性があると思う」

 「すばる望遠鏡」のHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム)が稼働する前の主焦点カメラ、Suprime-Cam(シュプリーム・カム)が、ハワイ時間の5月29日(日本時間5月30日)の夜、最後の観測を行った。棒渦巻銀河 NGC 7479Sのカラー映像だ。(提供:国立天文台、画像処理:田中壱)

 このSuprime-Camさえも、アメリカのハッブル宇宙望遠鏡の約200倍もの視野を持っている。その技術が現在のHyper Suprime-Camに引き継がれた。日本の天文観測技術は、まさに日進月歩で進化を続けている。

齋藤泉

齋藤泉(TBS科学担当解説委員)

経産省、文科省、外務省など10の省庁を担当。先端技術、ロボット、次世代エネルギー、情報通信など取材。東日本大震災後は福島第一原発の廃炉の現場取材を継続。趣味はジャズと映画鑑賞。合気道二段。