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前川前次官インタビュー「私にとっては怪文書ではない」

 文部科学省前次官・前川氏がNEWS23の単独インタビューに応じました。前川氏は、カメラの前でかばんを開け、加計学園の獣医学部新設をめぐり浮上した「総理のご意向」文書と同じだという書類を取り出して、詳細な説明を始めました。

 前川喜平文部科学省前事務次官。今年1月まで事務方のトップを務めていた、いわば全てを知る人物です。

 「今問題になっている8枚の資料です」

 前川氏が我々に提示したのは箇条書きにされた8枚の文書。

 「これは総理のご意向だと聞いている」

 「これは官邸の最高レベルが言っていること」

 「全く怪文書みたいな文書じゃないでしょうか。出所も明確になっていない」(菅義偉官房長官 17日)

 菅官房長官が「怪文書」と言ったあの文書です。

 「私が現職中に関係課からの説明の際に受け取って、私が保管していた資料。私にとってこれは怪文書ではない。私が自分で現職のときに手にしたものだから。あるものを『ない』と言ったり、知ってることを『知らない』と言ったり、これ以上やるべきでない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 「文書は存在する」、これまでの政府の説明と異なる当事者の証言です。

 愛媛県今治市の国家戦略特区。加計学園が経営する岡山理科大学の獣医学部の建設が急ピッチで進んでいます。開学は来年春の予定。このまま進めば、実に52年ぶりに新しい獣医学部が誕生することになります。

 理事長の加計孝太郎氏は、総理が「腹心の友」と慕う人物です。昭恵夫人も加計学園が運営する認可外保育園の名誉園長を務めるなど、家族ぐるみで付き合いがあります。

 「(安倍総理と加計氏は)極めて長年の友人です。だからお聞きしているんです。政策が歪められているんじゃないかという質問です」(社民党 福島みずほ議員)

 「そもそもですよ、何かですね、これ不正があったんですか。もし働きかけて決めてるのであれば、それは責任取りますよ。当たり前じゃないですか」(安倍晋三総理大臣)

 野党側は、安倍総理の意向によって加計学園に特別な便宜が図られたのではないかと追及しているのです。そんな中浮上した8枚の文書。国家戦略特区を担当する内閣府は、「総理のご意向」などという言葉で獣医学部の早期開学を迫り、学部の認可を担当する文科省は「手続きは踏むべき」などと懸念を示しているように読み取れます。

 関係する大臣たちは、こぞって文書の信憑性に疑問を呈しました。

 「該当する文書の存在は確認できなかったことが判明しました」(松野博一文科大臣 19日)

 「『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向だ』ということは一切ない」(山本幸三規制改革担当大臣 19日)

 しかし、前川氏は我々のカメラの前でその存在をはっきりと認める証言をしたのです。

 「8つの資料について、これは私が現職のときに受け取って私が保管していたものと同一である、これははっきり申し上げられる。(報告者は)課長の場合もあれば、企画官・補佐の場合もあると思う。複数2人以上で来た場合もあると思う。専門教育課から報告を受けて、そのときに受け取った資料」

Q.退官時に“この資料はとっておかなくては”と個人的にとっていた?

 「これについて私は責任を感じてたので。説明責任があるんじゃないのかという気持ちはあった」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 文書には日付も作成者も明記されていません。前川氏は、自身の手帳と照らし合わせたとした上で、文書を受け取った具体的な日付を挙げました。

 「これは、私は10月4日に専門教育課の説明を受けたときにはもらっていたはずです。『大臣ご確認事項に対する内閣府の回答』、この2枚のペーパーは、私は10月17日に説明を受けた際にもらっている。全部レク資料なんです。部下が上司に説明するために使う資料」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 通常、作成者本人が「レク」と呼ばれる説明に立ち会うため、名前も書く必要がないといいます。

 「上司というのは大体めんどくさがり屋でたくさんの文字は読まない。だから大きな字、ポイントが大きい」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 確かに今回の文書の字の大きさを見ると、文部科学省の一般的な文書と比べて大きいことがわかります。また、フォント(字体)にも違いが・・・

 「明朝体ではなくてゴシックにする方が読みやすいという通念がある。ポイントごとに丸をつける。上司への説明のときにだけ使う資料なので、わざわざ何月何日という必要はない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 「“総理のご意向”文書は本物」と言う前川氏。安倍総理は25日・・・

 「自由、民主主義、人権、法の支配、普遍的価値で結ばれたG7の強い結束を示していく、そういうサミットにしていきたい」(安倍晋三総理大臣)

 前川氏の証言に触れることなく、イタリアで行われるサミットへ向かいました。これまで“怪文書”としてきた菅官房長官は、改めて文書の内容を否定しました。

 「文書について文科省が行った調査結果では存在は確認できなかった。内閣府は、文書に書かれているような『官邸の最高レベルが言った』とか『総理のご意向』とか言った事実はない、総理からもそうした指示は一切なかったと」(菅義偉官房長官)

 文科省は、文書をめぐり、幹部ら7人を対象にヒアリングを行い、省内の共有ファイルなどを調査したとしています。その結果、文書は確認できなかったとの結論を出したのです。

Q.文書は文科省内で作られていないと結論づけたが、仮に覆った場合、どう責任をとるのか?

 「新たな事実が出てくれば、必要があれば調べていって状況を判断していく」

Q.辞任する考えは?

 「考えておりません」(松野博一文科大臣 19日)

Q.文書が役所のどこかに残っている可能性は?

 「(文書を)作った人は今もいるわけですよ、文部科学省に。本当のところ、わざわざ調査するまでもない。現役の後輩たちが気の毒でね。『ここにあります』なんて言っちゃダメだよという話。『私持ってます、ここにあります』とか言っちゃダメという話」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 前川氏が文書に関わったと指摘した文科省の現役職員は、25日朝、私たちの取材に対し「何も言えないです」と緊張した面持ちで答え、足早に立ち去りました。

Q.前川氏に取材し「文書は存在する」と証言を得た。存在を認めるか?

 「私、インタビューを見ていないので、どういう発言したか、今、承知していない。それに関してコメントできない」(松野博一文科大臣)

 松野文科大臣には野党からも追及が相次ぎました。

 「前次官の告白の内容は、普通に見れば動かしようのない事実だ」(民進党 斎藤嘉隆参院議員)

 「既に辞職された方の発言。文科省としてコメントする立場にない」(松野博一文科大臣)

 「確認できなかったということは、あるともないとも言っていない。確認できなかったということで、ないという結論ではないですね?」(民進党 斎藤嘉隆参院議員)

 「調査により、担当局内の行政文書として存在していない。存在がない」(松野博一文科大臣)

 「行政文書としては存在しない」と述べ、改めて調査をする考えは示しませんでした。野党側は前川氏の証人喚問を求めています。

 「(調査された職員に)記憶がないはずない。『記憶ない』と答えたことにさせられているんだな。彼らにとっても本意ではない、非常に不本意な振る舞いをさせられている。大臣も含め、ものすごく気の毒だなと」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 文書の中にある「総理の意向」という言葉。これについても前川氏は証言しました。

Q.「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」、誰の言葉?

 「内閣府の藤原審議官だと認識しています。専門教育課の者があのペーパーで説明に来たときに『内閣府の藤原審議官からこのように言われた』と私に説明した。『総理のご意向だと聞いている』、審議官は聞いている、だけど、それを言った人は誰かわからないし、その人は本当に総理からそういうふうに聞かされたのかもわからない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 しかし、内閣府で国家戦略特区を担当している藤原豊審議官は、「『総理の意向』などと言ったことはない」としています。

 「『官邸の最高レベルが言っている』『総理のご意向だと聞いている』とお伝えしたことはございませんし、総理からもそうした指示等は一切ございません」(藤原豊審議官)

 食い違う両者の証言。

 「私は私の部下を信頼していますから。部下が聞いてきたことを文字にして持って来た、確かに聞いたことだろうと私は信じている。我々は内閣府からそう聞かされた。『聞かせた覚えはない』というなら聞き間違いだったのかと」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 では、「総理の意向」などの言葉を文科省側はどう受け止めたというのでしょうか。

 「政治的な配慮が必要だという言い方に聞こえる。役人である我々ではなく、政治家である大臣・副大臣がどう判断するかの問題」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 判断するのは大臣や副大臣としながらも・・・

Q.「総理の意向」などを聞かされた側(官僚側)に配慮・遠慮が働いた?

 「それなりの意識はしただろうと思う。何もなかったとは言えない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 これまで、獣医学部の新設は50年以上認められてきませんでした。「獣医師の数は足りている」との認識からです。

 「説明がつかないと思う。どうして今治で160人規模の獣医学部をつくらなきゃいけないのか。一体、どういう分野・人材をどの程度の規模養成するために必要なのか」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 今治市などは2007年から15回にわたって新設を申請しましたが、認められませんでした。しかし、2015年になって風向きが変わります。安倍総理が議長を務める国家戦略特区に提案すると、実現に向けて急速に事態が動き出したのです。

 「腹心の友である理事長から獣医学部創設についてこれまで何らかの相談を受けていたか」(民進党 斎藤嘉隆参院議員)

 「加計学園から私に相談があったことや圧力が働いたということは一切ない」(安倍晋三総理大臣)

 文科省は内閣府に対して獣医学部を新設する必要性を具体的に説明するよう求めたといいますが、要求はほとんど受け入れられなかったといいます。

 「我々としての懸念は何度も何度も投げかけてはいたけど、内閣府はいいんだやれというスタンスだった。私から見ると、内閣府の仕事のしかたというのは乱暴なんじゃないかと意識せざるを得ない。どうして乱暴なことをしたのか、私には説明できない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 結局、内閣府に押し切られたと話す前川氏。自戒を込めてこう訴えます。

 「獣医学部の設置については、文部科学省がここまでやったけど、力及ばず、こういう形になってしまっている。行政の筋がおかしいと説明する責任ある。あるものを『ない』と言ったり、知ってることを『知らない』と言ったり、これ以上やるべきでない。私ができなかったことをやってくれと後輩に言っているわけだから、何で自分でできなかったことをやれと言ってるんだという批判はあると思う」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 前川氏は今年1月、事務次官を引責辞任しています。文科省が法律で禁止されている天下りを組織的にあっせんし、さらにその事実を隠蔽していたことが理由です。その後、文科省を去った前川氏。今回、文書が実在すると告白した背景には、どんな意図があるのでしょうか。

Q.自分が天下りできなかった個人的恨みで言っていることは?

 「そんなことは毛頭ありません。再就職規制違反の問題は、そのとき、事務方の最高ポストに私がいたわけだから、責任はある。責任あるし、悪かったと国民の皆さんに謝らないといけない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 責任を感じて次官を辞任したという前川氏。菅官房長官は前川氏を批判しました。

 「当初は責任者として自ら辞める意向を全く示さず、地位にしがみついておりましたけれども、天下り問題に対する世論からの極めて厳しい批判等にさらされて最終的に辞任をされた方である、このように承知しております」(菅義偉官房長官)

 前川氏は25日夕方、記者会見を開き、当時、「計画は加計学園ありきで動いていた」と証言しました。

 「関係者の間の暗黙の共通理解としてあったのは確かだと思います。内閣府においても文部科学省においても、この国家戦略特区で議論している対象は今治市で設置しようとしている加計学園の獣医学部であると、そういう共通認識のもとで仕事をしていたと認識しております」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 菅官房長官が「事務次官の地位にしがみついていた」と述べたことについては、こう否定しました。

 「辞職を承認していただきたいというお願いを私から大臣に申し上げた。地位に恋々としたとか、あるいはジタバタしたということは、私は無かったと思っている」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

 一方、前川氏が出会い系バーに通っていたと読売新聞が報じたことについては、「女性の貧困の実態を実際に会って話を聞いた。極めて個人的な行動で、どうして読売新聞が報じたのかわからない」などと述べました。

 今回、「NEWS23」の単独インタビューに応じた前川前事務次官。文書の存在を証言するに至った思いをこう話しました。

 「政府の中でどのように意思決定が行われているのかを国民が知ることは、民主主義の基本の基本だと思います」

Q.この文書が公になったことで国民に何を知ってほしい?

 「文部科学省が心ならずも十分な裏づけの無い仕事をせざるを得なくなっているということ。決して内閣の転覆を考えているわけではない」(文部科学省 前川喜平前事務次官)

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