豊洲市場移転問題、近く決断か 都議選にらみ強まる包囲網と難問

●豊洲市場に移転すべきか、決断せざるを得なくなる
●市場移転問題を先延ばしにすると五輪が大混乱になる可能性も
●都議選にらみさらに包囲網が強まる中、知事の決断は

 小池知事に立ちはだかる難問が、東京五輪の費用と豊洲市場移転の問題だが、市場移転問題が山場を迎えている。豊洲市場では、環境基準の最大100倍のベンゼンが地下水から検出されているが、専門家会議が、汚染された地下水をくみ上げる管理システムの強化や、盛り土がされず地下に作られた「空間」の底をコンクリートかシートで覆えば「無害化」が可能だとする見解を18日に公表・・・するはずだった。しかし、業者から反対の声が相次いで上がり、平田健正座長が「無害化を約束できない」と発言。紛糾する中、会議は途中で打ち切られた。移転の賛否双方が熱を帯びるこの問題の解決の難しさを象徴する光景だった。

 市場の移転は引くも進むもいばらの道、築地市場の再整備、豊洲市場への移転のどちらを選んでも批判を受ける難問だ。しかし、都議選告示までまもなく1か月となる中、小池知事は近く「決断」せざるを得なくなると思われる。それは、移転をめぐる問題が、市場の問題だけに留まらず、さらに別の問題をはらんでいるからだ。

 市場の移転をこれ以上先延ばしにした場合、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催にあたり、大混乱が起きる可能性があるのだ。大会を成功させるためには、施設や警備、運営面が重要なのはもちろんだが、“アキレス腱”とも言われる存在が、輸送・交通インフラの整備なのだ。組織委員会は、大会期間中に会場間を動くバスを2000台と見積もっているという。当初は築地市場を移転した跡地がバスの巨大駐車場となる計画だったが、移転をしない場合、駐車場にできる他の広大な土地を探さないといけない。移転する場合にも、築地市場はアスベストが使用されているため、駐車場にする工事にも相当の時間がかかる可能性がある。

 さらに、都心と有明地区の会場を結ぶ大動脈・環状2号線の工事もリミットが近づいている。環状2号線は、五輪招致の際に都知事名で五輪までに完成させることを約束しているため、何としても作らないといけない。五輪の開会式が行われる7月24日は夏休みに入ったばかりで道路が混雑する時期でもあり、環状2号線がないと大渋滞になってしまう。海上から海底を掘る特殊な工事も加わり、たやすい工事ではないという。そもそも市場が築地から豊洲に移転しないと、工事ができない。小池知事と対立する都議会自民党は、豊洲への移転を都議選に向けた公約に掲げている。 先延ばしにした結果、バスの駐車場や環状2号線の完成に影響が出れば、責任を追及されかねない。知事と連携する公明党も、都議選前の決断を迫っている。決断を遅らせれば、「決められない知事」とのレッテルを張られかねない。

 5月11日午前、東京都以外の五輪仮設施設の費用およそ500億円を東京都が全額負担する意向を、小池知事が安倍首相と面会して伝えた。同じ日の午後、小池知事は情報番組を見ていたという。この2日前の9日、神奈川・埼玉・千葉の3県の知事が、官邸で安倍首相に直訴し、首相は都外の仮設施設の費用について、東京都の決断を待たずに調整するよう丸川五輪担当大臣に指示していた。小池知事は、これらの経緯が情報番組でどのように放送されているかチェックしていたとみられる。その番組内容に、小池知事は強い不満を持ったという。都外の仮説施設の費用全額負担を、小池知事が追い込まれて決断したのではないかとの論調に、番組の内容がなっていたからだ。ゴールデンウィーク前に首相との面談がすでに決まっていたとはいえ、9日に3県の知事と会った際、「5月末までに決める」と自ら語った直後のことだっただけに、追い込まれたと受け止めた人も多かったに違いない。

 小池知事が「全額負担」の意向を表明したあと、丸川五輪担当大臣は「やっと決断していただいた」と発言。大会組織委員会の森喜朗委員長は決断が「遅すぎる」と批判した。小池知事が“追い込まれた”と受け止められるような状況を作ったのは、菅官房長官だと言われている。いずれも小池知事とは、関係が良くない人たちだ。都議選まで2か月を切り、都議会自民党と全面対決に向けてひた走る小池知事に対し、強まる「包囲網」が目に見える形で現れた。

 全額負担を決めた都外の仮設施設の費用およそ500億円については、うち250億円を大会組織委員会が負担すると16日に表明したが、残る250億円については、まだ都議会の承認が得られていない。都議選をにらみ都議会自民党が追及する構えだ。共産党都議団は、全額負担の意向を撤回すべきだとしている。この250億円という金額も、五輪の費用全体のほんの一部に過ぎない。見込まれる総経費は1兆8000億円、このうちおよそ6500億円はどこが負担するのか決まっておらず、宙に浮いているという。

 小池知事は12日の定例会見で「経費の圧縮、大会組織委員会の増収、国の負担で、現時点で2000億円から3000億円の見直し効果が出せる」と“巻き返し”を図った。費用の問題について5月中に大筋合意を目指すとしているが、都外の仮設施設と同じ構図で、都が国や地方に負担をお願いする場面が出てくるとみられる。この五輪をめぐる経費の問題についても、リミットは近づいている。しかし都議選が終わるまでは、すんなりと交渉が進むか疑問だ。「包囲網」の中で、小池知事のポイントになるような場面が生まれるとは考えにくいからだ。

 市場の移転と五輪の経費という2つの問題。都議選が近づき、それぞれの利害と人間関係が複雑に絡み合う中、立ちはだかる2つの難問に小池知事がどんな決断をするのか、目が離せない。

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更新日時:5月23日 2時2分

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