<仏大統領選>“極右ルペン氏”の勝利はあるか?

●超党派マクロン氏が世論調査では優勢
●それでも極右ルペン氏に可能性?鍵は「棄権」
●構造的な民主主義の危機は続く

<ルペン氏の勝利の可能性は>

 「60%VS40%」。超党派のマクロン前経済相(39)が、極右政党・国民戦線FNのルペン党首(48)を支持率で20%も引き離している(フランス世論調査会社ifopの4月28日付)。

 5月7日の決選選挙まであとわずか。やはりルペン氏に勝ち目はないのか?

 “ルペンを落とすための選挙”。政党の動きはそう見える。二大政党である与党・社会党や最大野党・共和党が、マクロン氏支持を早々に打ち出した。第1回投票で20%近い支持を獲得したフィヨン氏、メランション氏から、マクロン氏は広く支持を得ている。TBS取材チームによれば、ルペン氏支持の基礎票は、第1回で獲得した20%前後であり、今回ルペン氏に投票しなかった右派の有権者の票を積み上げたとしても、かなりの劣勢だという。

<カギを握る投票率>

 「マリーヌ・ルペンはガラスの天井を破る~意図的な棄権の強い効果」。 このようなタイトルの論文で、ルペン氏勝利の可能性を指摘したのは、物理学者であり、政治学者のセルジュ・ガラム氏である。ガラム氏は、トランプ大統領の勝利、EU離脱に関するイギリスの国民投票の結果について予想が的中したという。タイトル通り、ガラム氏は「棄権」に着目する。

 そもそも、第1回投票の段階から、各種の世論調査で、マクロン氏の支持者は、ルペン氏と比べて「強く」はない。決選投票に向けて、他候補の支持者からの票を集める必要がある。世論調査では、20%引き離しても、マクロン氏支持の60%のうち、大量の棄権が出て、投票率が低くなったら、ルペン氏有利の状況が生まれるという。

 では、20%という差が覆るほどの「棄権」があるのか?

 気になるのは、第1回投票直後、そして5月1日にも起きた若者たちの暴徒化である。「どちらにも投票したくない」。 反マクロンでもあり、反ルペンでもあるという。今回の選挙結果に不満を持つ人々だ。

 また、ツイッター上では#SansMoiLe7Maiというハッシュタグのツイートが急伸している。このフランス語は「5月7日は私無しに」という意味だ。5月7日は投票日。積極的な「棄権」を示唆するタグなのだ。

 北海道大学の吉田徹教授も「よほどのことがない限り、マクロン氏勝利」という前提のうえで、いくつかの不確定要素を挙げた(日本記者クラブでの分析会見)。吉田教授によると、マクロン氏に投票した有権者のうち、「止む無く投票した」という人の割合が57%。これに対してルペン氏は、「止む無く」が43%だ。マクロン氏への支持の「強度」が低いことがわかる。さらに、共和党フィヨン氏の支持者が、もともとオランド政権の閣僚だったマクロン氏に移行するのは不自然ではないが、極左系メランション氏の支持者にとっては、政策面では大きな乖離がある。「極右のルペン氏を当選させない」という点での結びつきのため、「強度は弱い」と言えるという。

 5月1日に起きた若者たちの暴徒化も、メランション氏支持者グループが呼びかけたデモがきっかけだった。決選投票の投票率に注目したい。

<極右台頭の予兆はあった>

 それにしても、なぜここまで、極右・国民戦線が存在感を増しているのか。吉田教授は、その変容を5期に分けて解説する。

【1】創生期(1969年―73年)【2】停滞期(1973年―83年)【3】発展期(1983年―90年)【4】定着期(1990年―99年)【5】拡張期(1999年以降)

 特に、現在も含む、【5】の拡張期には、絶対数は多くないが、若者と女性支持の伸び率が大きいという。

 米国でのトランプ政権の誕生。欧州の“極右台頭”―。背景にある、開かれた社会、多様性ある社会、グローバル化が進む社会に対する強い反発。それは経済格差や失業率の高さなどが要因と指摘される。

 10年以上前の2005年から4年間、私は英国に駐在していたが、当時すでに、その予兆はあった。ロンドンでは、金融街シティーを中心にした富裕層がさらに富み、その一方で、貧困層の増加、移民社会との軋轢、社会保障へ不満などが燻っていた。社会の「分断」が深まっていたのだ。

 フランスの歴史学者ピエール・ロザンバロンが「カウンター・デモクラシー」を打ち出したのは、その当時。政治が民意を反映していないという「不信」の観点から、デモや国民投票で監視すべきという概念だった。

この10年以上、既存政党による政治が、社会が抱える構造的な課題に真摯に向き合わなかったことが、今の状況を生んでいるのではないか。これは、“民主主義の危機”に他ならない。フランスだけでなく各国の政府が、社会の課題に対して具体的な処方箋を示し、解決を着実に実行するまで、危機は続くだろう。

注目キーワード(クリックして記事一覧へ)

この記事の関連ニュース

5月24日(水)のヘッドライン

TBS NEWS アクセスランキング

更新日時:5月24日 13時2分

ニュース番組ダイジェスト

5月24日(水)の特選ニュース

過去のニュース