20日
23時29分
10分46秒

仏大統領選、極右ルペン候補「脱悪魔」目指し狙う女性票

 ヨーロッパの行方を占うフランス大統領選。民衆を熱狂させるのは極右の政治家です。あぶり出される社会の分断。フランスでも番狂わせが起こるのでしょうか。フランス大統領選挙は、23日に1回目の投票が行われます。何といっても注目はマリーヌ・ルペン氏。移民排斥やEU離脱を訴える極右政党の党首が、最終盤になっても支持率トップを争っています。雨宮塔子キャスターの報告です。

 南仏マルセイユは、アルジェリアやチュニジアといった北アフリカへの玄関口となっていることもあって移民が多い街ですが、実際に見回してみましても様々な肌の方がいて移民がたくさんいます。それなのにマルセイユは、移民排斥を訴えるルペン候補の支持がフランスの中でも最も多い地域の1つとなっています。一体それはなぜなのか、躍進の背景を探りました。

 マリーヌ・ルペン候補が壇上に現れると、会場の熱気は最高潮に達します。

 「我々がやろうとしていることは、民衆の名のもとに政治を行うことです」(極右政党「国民戦線」 ルペン候補)

 ルペン氏が最後のお願いの場所に選んだのは南仏マルセイユ。移民が多い反面、失業率も高く、国民戦線の支持率が高い地域の1つです。ルペン候補は女性の支持者を取り込んでいると聞きましたが、本当に参加者の半分が女性です。反移民、反EUを掲げるルペン氏。最新の世論調査でも、トップをうかがう勢いを維持しています。

 「一番好きなのはEU離脱を訴えているところ」(ルペン候補支持の女子学生)

 「テロの後で治安が第一。ルペン候補はテロを防ぐため『ゼロ寛容』と言ったが、この国にはそれが必要です」(ルペン候補の支持者)

 かつて、国民戦線は人種差別的で極端な思想から、フランス国民に敬遠されてきました。ところが今は、6年前、父親から党首を引き継いだルペン氏は、「脱・悪魔化」と称し、ソフト路線を打ち出し始めました。特に、今回の選挙でルペン陣営が、重視しているのが女性票です。母親としての一面を強調。パンフレットは女性誌のように仕上げました。

 学生街にあるルペン氏の選挙事務所では、若者たちがルペン氏のイメージ戦略について話し合いを行っています。選挙事務所にも、若い女性の姿が目立ちます。

 この日は、メディア対応の訓練も・・・

 「記者から人種差別について聞かれたら、差別主義者はもう国民戦線にはいないと答えよう」(ルペン陣営のスタッフ)

 女性票の取り込み作戦で力を入れているのは、イスラム原理主義への批判です。

 「(イスラム主義は)スカートをはくこと、職を持つこと、ビストロに行くことを禁じて女性を抑圧している。尊厳や自由を大事にする女性にとって、こんなことは受け入れられない」(国民戦線 ルペン候補・2月)

 パリの大学で法律を学ぶユリアンテさん。相次ぐテロや増え続ける移民に不安を感じルペン氏を支持。イスラム原理主義から女性を守ってくれると期待しています。

 「イスラム主義の影響で最近では、パリ郊外のカフェでは女性が入ることを禁じられているお店があるそうです。移民や治安の問題で最初に被害を受けるのは女性だと感じています」(ルペン氏を支持する学生 ユリアンテさん)

 街頭でルペン氏のチラシを配ると受け取ってくれる人も多く、手応えを感じていると言いますが議論となることも。

 「外国人がいなくなればフランスはおしまいだ。すでに死んでいるようなもんだ」(男性)

 「フランスはもう死んでいますか?」(ユリアンテさん)

 「ルペンが立て直せるのか?」(男性)

 「働きたい外国人は歓迎しますが、福祉制度を悪用している人もたくさんいます」(ユリアンテさん)

 フランスを相次いで襲ったテロ事件。去年7月には、ニースで移民の男が遊歩道にトラックで突っ込み、86人が亡くなりました。当局は、男が急激にイスラム過激思想に染まった可能性があるとみています。今も花が手向けられている事件現場。周辺の地域では、ルペン氏支持の声が広がっているといいます。

 「亡くなった女性とは知り合いでした。ほぼ毎日一緒にコーヒーを飲む仲でした」(テロで友人を亡くした女性)

 この女性は、ルペン氏に投票するつもりです。

 「移民を一人残らず全員排除するべきだと感じました。ルペン氏が言っていることはフランスにいる移民を選別し、フランスに反する移民はフランスから出ていくということ。全くその通りです」(テロで友人を亡くした女性)

 一方、ニースのイスラムコミュニティーのリーダー・アイサウイさんはこう言います。

 「これはイスラム教徒のテロではない。テロは宗教に関係なく起きるし、あらゆる宗教の人が犠牲になるのです」(ニースのイスラムコミュニティーのリーダー アイサウイさん)

 実はアイサウイさんは、ニースの事件でイスラム教徒で移民の友人を亡くしました。イスラム過激思想に染まった男が起こした事件で、イスラム教徒も犠牲になっているのです。

 そのアイサウイさんは、ルペン氏の「脱・悪魔化」については、本質的に全く変わっていないと訴えます。

 「国民戦線の指導者たちは『あなたが抱えている問題の原因は移民のせいだ』と言って扇動している。それは間違いです。人を操るには恐怖をあおるのが一番です。恐怖が社会にまん延すれば不幸なことに人々はその人たちにひきつけられていきます」(ニースのイスラムコミュニティーのリーダー アイサウイさん)

 Q.ルペン候補、イメージ戦略はなかなか功を奏しているようです。それから有権者の中には、ルペンさん嫌だなと表向きは言っていても、実は心底では共感している、いわゆる「隠れルペン」と言いますか、アメリカでも「隠れトランプ」が話題になりましたが、そういう傾向もあるんじゃないでしょうか?

 実際にルペン候補がソフトイメージに変えてから支持しているというよりも、根っからの父親のジャンマリ氏の時代から支持しているという方が多いような印象を受けました。そして、実際にインタビューにマイクを向けてみても、「カメラに映さないで」あるいは「答えられない」という方が多く隠れルペン支持者が、それなりに多いような印象を受けました。

 Q.今回の大統領選挙は、アメリカの最近のトランプ現象、それからイギリスのEU離脱という、世界的に排外主義が高まる中での選挙ですが、さて、フランスでもその排外主義が一層強まるのか、ここでストップがかかるのか、そういう意味では世界が注目する選挙だと思いますが、そういう世界から見られているという意識はあるのでしょうか?

 実際に、19日の集会でも海外のメディアが数多くそろっていました。ルペン候補がもし大統領になったらという風刺漫画なんですが、今フランスで20万部も売り上げています。描かれているのは、EUを離脱した後、景気がさらに悪化して混沌とした暗い社会になるということなんです。そして、表紙には「知らなかったとは言わせないよ」と皮肉たっぷりに書いてあります。19日取材してみても、実際にどんなルペン候補の政策を支持するかと聞いても、答えられない方が多いのです。ただ単に単純に全部好きという方が多いのですが、具体的に聞くと答えられない。そして、こういった閉塞感やテロへの不安は全て移民や外国人のせいだというネガティブな感情から支持している人が多いと思いました。フランスは移民国家です。この多様性にひかれて私もやってきたところがあるんですが、この多様性がこの国を大きく豊かにしてきたと思っています。

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