21日
19時17分

【NEWSの深層】福島原発事故7年目の課題

福島原発事故7年目の課題(齋藤泉・科学担当解説委員)
●廃炉まで50年という指摘も
●カギ握るのはロボット開発の人材育成
●東電は情報開示で若者の意欲に答えよ

<廃炉に50年との指摘も>

 東日本大震災に伴って起きた福島第一原発の事故は、先月で発生から7年目に入った。事故当時、1号機から3号機の原子炉格納容器では、地震と津波によって外部電力が失われたことから空だき状態になり、内部の温度は2千数百度に達し、核燃料が周りの制御棒などとともに溶け落ちる、炉心溶融=メルトダウンという事態に陥った。

 3つの原子炉でメルトダウンを起こした原発事故は世界にも例がない。東京電力は今、福島第一原発の4つの原子炉の廃炉に向けた作業を進めている。当初は30年から40年かかると言われたが、最近では専門家の間から50年という言葉も出始めている。

<ロボットも耐えられない高い放射線>

 廃炉で最も困難な作業は言うまでもなく溶け落ちて固まった燃料デブリの取り出しだ。そのためには燃料デブリが現在、どのような状態にあるのかを正確に知ることが不可欠だ。東京電力などが発表している資料では、格納容器の下に溶け落ちている丸くて黒い燃料デブリの図をよく目にするが、これはあくまでも現在までに得られているデータをもとに想像で描いているもので、実際に燃料デブリの姿を捉えた映像はない。

 今年2月、2号機の格納容器に「サソリ型ロボット」と呼ばれる調査用のロボットが投入された。しかし、内部の放射線量は1時間に最大650シーベルトもあることが分かった。ロボットでも万能ではない。これだけ放射線量が高いと半導体やLEDも数時間で作動しなくなる。2号機のロボット調査は2メートル余り進んだところで堆積物に阻まれて動けなくなった。結局、当初の目標である炉心がある圧力容器の下まで到達することができず、調査は断念した。

 また先月、1号機の格納容器にも調査のための自走式ロボットが投入され、底部にたまった汚染水の中をカメラで撮影した。しかし、この調査でも燃料デブリを撮影することはできなかった。人が近づけない原子炉格納容器の中を調べるためには、ロボットを投入するしかないのが現状だ。原子炉内部は予想以上に過酷な環境で、さらなる技術開発が求められている。

<最大の鍵は東電の情報開示>

 世代をまたいで行われる福島第一原発の廃炉のカギを握るのは、言うまでもなく人材育成だ。今、ロボット開発を担っている世代が、次の世代を育て、その世代がさらに次の世代にバトンを渡していくことになる。廃炉というと「物を壊す」というマイナスのイメージがあり、物作りを目指して進路を決めた若い技術者や研究者の中には躊躇する向きのあることも現実だ。

 ただ、一方で、これまで原発から恩恵を受けてきたのだから廃炉は社会的な義務だという考え方もある。地元、福島の人たち、特に物作りを担っている中小の企業からは「ピンチをチャンスに」という前向きな声も聞く。また、これまで人類が成し遂げたことがない3つの原子炉からの燃料デブリ取り出しをチャレンジングな仕事として取り組もうとしている大学や研究機関もある。福島県いわき市にある福島工業高等専門学校では数年前から廃炉に関する教育を始めた。そこで学ぶ若者たちを取材したが、当初は廃炉には積極的には関わりたくないと本音を述べていた彼らだが、その後、福島第一原発を見学し、現場を目の当たりにして、初めて、将来、廃炉に携わりたいと感じたと話してくれた。こうした志に応えるためにも、東京電力はマイナスの部分も含めて、これまで以上に情報を惜しみなく開示する努力をすべきだろう。

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