6日
17時00分

“共謀罪”不信と裏切り~これが捜査の現実だ

 ●米国では捜査機関のスパイが標的を犯罪謀議に引き込む罠が横行。
 ●記者の取材対象が「共謀罪」で逮捕された。
 ●“共謀罪”成立後、捜査手法の拡大の動きが出るだろう。

 “共謀罪”、テロ等準備罪が国会で審議入りした。周知の通り犯罪の計画に合意した者を処罰する罪だ。反対が根強い“共謀罪”、いったい捜査ではどう使われるのだろうか。賛否を語るには、現場を見る必要がある。

 米国には古くから「共謀罪」が存在し、捜査で幅広く使われている。実は私の取材対象だったニューヨーク在住のイスラム教徒2人もこの共謀罪でFBIに逮捕された。事件の概要はこうだ。ピザ屋を経営するモハメド・ホサイン(バングラデシュ移民)は店に客として来たマリックなる男と親しくなった。マリックは裕福な男で、ピザ屋経営に資金援助をするようになった。

 ある日、ホサインはマリックの家に招かれ、黒い筒状の物体を見せられた。

 「これは地対空ミサイルです。中国から輸入してムジャーヒドに売ります。彼らはアラーの名の下で、飛行機を撃墜します。あなたもこのジハードで金をつくりましょうよ」

 マリックはマネーロンダリング計画を提示した。マリックがミサイルの売却益5万ドルをホサインに渡し、ホサインは毎月2000ドルの小切手を事業協力費名目でマリックに渡す。払い戻すのは合計4万5000ドルで、差額の5000ドルはホサインの手元に残る、というおいしい仕組みだ。金に困っていたホサインはこの計画に合意した。

 「取引に立ち会う証人が欲しい。だれか適任者はいませんか?」

 マリックの提案で、ホサインは自分が通うモスクの教導師であるヤシン・アレフ(クルド難民)を紹介。アレフは毎月の小切手の受け渡しの立会人になった。ある晩、ホサインとアレフは武装したFBI捜査官に逮捕されることになる。容疑はテロ準備に関わった「共謀罪」だった。逮捕された二人は、共謀罪の証拠を見せられて驚愕した。これまでのマリックとの会話がすべて録音され、ミサイルを触っている二人の姿まで撮影されていたからだ。そう。信頼する友人マリックは、FBIの情報協力者で、捜査官の言うなりに動いていたのだ。FBIはアレフを狙い撃ちしていた。イラクのテロリストキャンプで米軍が発見した住所録に、アレフの電話番号が書かれていた、というのがその理由だ。

 捜査機関が、密室での話し合いの証拠を掴むのは至難の業だ。だから米国の捜査機関は共謀罪立件のために、おとり捜査を使う。共謀の証拠を掴むために協力者を潜入させるだけではなく、犯罪の意思がない者を謀議に引きずり込み、合意させるという「罠」が横行している。テロの脅威に晒された米国社会はこれを容認し、在米イスラム社会は、潜入者がいるのではないかと常に疑心暗鬼になっている。今の日本ではこうした犯意を誘発するおとり捜査は認められていない。

 しかし、日本警察の捜査員はこう語る。「日本でテロ等準備罪が新設されても、いまのままでは証拠収集が困難で捜査には使えない。アメリカのような、幅広い捜査手法を認めるようにしなければダメだ」

 “共謀罪”が成立すれば、次は“共謀罪”立件のためのおとり捜査、電話やメールの傍受、さらには最高裁が違法としたGPS装着など、捜査手法を拡大しようという動きが出るだろう。法案の国会審議では将来を見越した議論をして、我々国民もその行方を注視したほうがいい。米国のような捜査が横行すれば、社会は大きく変質するのだから。

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