13日
8時10分
5分50秒

三島由紀夫の肉声テープ見つかる、割腹自殺の9か月前に

 作家・三島由紀夫が自ら命を絶つ9か月前に語った未発表の肉声テープが、TBSの社内で見つかりました。

 TBSに眠っていた1本のテープ。そこに残されていたのは、ノーベル文学賞の候補にもなった作家・三島由紀夫の肉声でした。

 「ちょうど今朝、『暁の寺』が完成したんですよ」(三島由紀夫の肉声テープ)

 「暁の寺」とは、三島最後の長編小説となった「豊饒の海」の第3巻。録音されたのは、この「暁の寺」が完成した1970年2月とみられています。このとき、三島は45歳。9か月後に衝撃的な死を迎えるとは誰も予想していませんでした。

 イギリス人の翻訳家に対し、1時間20分にわたり率直に語る三島。自身の文学について分析する場面が登場します。

 「僕の文学の欠点は小説の構成が劇的すぎることだと思う。ドラマティックでありすぎる。どうしても自分でやむをえない衝動なんですね。大きな川の流れのような小説は僕には書けないんです」(三島由紀夫の肉声テープ)

 また、尊敬する作家・川端康成と自身を比較したくだりもありました。

 「川端さんの文章なんてね、睡眠薬が助けている点もありますけどね、でもジャンプするのはすごいですよ。そりゃ怖いようなジャンプしますよ。僕ああいう文章書けないな、怖くて」(三島由紀夫の肉声テープ)

 このインタビューの後、「豊饒の海」第4巻を書き上げた三島は、ある行動に出ます。

 「憲法のために、日本を骨なしにした憲法に従ってきたということを知らないのか。諸君の中に一人でも俺と一緒に立つやつはいないのか」

 自衛隊の市ヶ谷駐屯地に乱入。自衛隊員に決起を呼びかけた後、自ら命を絶ったのです。テープのなかで三島は、この行動を示唆するようなことも語っています。

 「死がね、自分の中で完全にフィックスしたのは、自分に肉体ができてからだと僕思うんです。死の位置がね、肉体の外から中に入ってきた気がする」(三島由紀夫の肉声テープ)

 そして、話題は平和憲法に。三島は、戦後の日本社会に「偽善」があり、その根本に平和憲法があるという考えを披露しています。

 「憲法9条ってのは全部いけないと言っているんじゃないんです。人類が戦争をしないということは立派なことです。(9条)第2項がいけないでしょ。念押しの規定をしているんですよ、アメリカ占領軍がね。日本の変な学者がそれを逆解釈して、自衛隊を認めている。日本人はごまかしごまかし生きてきた、二十何年間。僕は大嫌いなんですよ、そういうことは。ごまかして生きていくことは耐えられない。本当に嫌いですね」(三島由紀夫の肉声テープ)

 専門家は、「自決への行動を構想し始めた時期で、事件を前提にした語り口となっている」と指摘します。

 「『死というものが外から内にやってきた』とテープで言っている。(三島の)肉体改造とも関連してくる。ちょうど自衛隊への体験入隊とも関連している。1970年初頭で具体的な死への行動の一歩と読み取れる」(三島由紀夫文学館 特別研究員 山中剛史さん)

 生前、三島由紀夫と親交のあった歌手で俳優の美輪明宏さんは、テープを聴いた感想を次のように話しました。

 「このテープを伺っていますとね、何て無防備なんだろう、珍しいですよね、本当に素で話してらっしゃる。日本少年のモデルみたいに純粋な、本当に人間の一番純なところをそのまま持ち続けて亡くなった方というのが、本当にこれを聞いていますとつくづく思い出されて、とても懐かしかった」(三島由紀夫と親交のあった 美輪明宏さん)

 三島はテープのなかで自らの行動について、まるで死を予期したかのように冷静に分析しています。

 「僕の小説よりも僕の行動の方が分かりにくい自信があるんです。僕が死んでね、50年か100年かたつとね、『ああ、分かった』と言う人がいるかもしれない。それでもかまわない。生きてるうちは人間はみんな何らかの意味でピエロです。人間は死んだときに初めて人間になる。人間の形をとるって言うんです。運命がヘルプしますから。運命がなければ人間は人間の形をとれないんです。ところが生きているうちは、その人間の運命が何か分からないんですよ」(三島由紀夫の肉声テープ)

 三島由紀夫が亡くなって47年。見つかったテープは、三島の世界観や思想を知る新たな手がかりとなりそうです。(12日19:52)

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更新日時:1月17日 13時2分

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